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夏の葬列

夏の葬列

まだ7月の始めだというのに、毎日のように30度越え、真夏日が続いて嫌になりますね。
こういう日は冷房の効いた室内にこもって本を読むのが一番。引きこもり最高!
でも折角だから夏に関連した作品を読みたいなと思い、ふと目についたのが山川方夫の「夏の葬列」でした。
教科書に採用されるくらい有名な作品ですし、山川方夫著の作品自体とっても好きなのですが、そういえば最近は読んでいなかったのでまた改めて読んでみたくなったんです。

「夏の葬列」の話を簡単にすると以下になります。

時は戦後20年ほど。サラリーマンである主人公の男が、戦争末期の幼少期に学童疎開によって移り住んだ場所へと訪れるところから始まります。
記憶にある通りの芋畑のそばを歩いていたところ、目の前から葬列が向かってきたところで、幼少期の記憶を思い出しました。
自分と同じく東京から疎開してきた二つ上の女の子と芋畑にいた時に空襲に遭ってしまった時のこと。彼女が自分を助けようとしてくれたにもかかわらず、彼女が白く目立つ服を着ていたので「自分まで標的にされてしまう」と、銃撃の下に彼女を突き飛ばしてしまうのです。
その後彼女がどうなったか知らぬままその地を離れた主人公ですが、大人になってからまたその罪の記憶に向かい合わなければならない出来事に直面してしまう……。

ショートショートにも関わらず、その短い物語の中に凝縮された風景描写やドラマ、人間らしさが気に入っています。
山川方夫さんの作品はどれも描写の色彩表現が豊かなのが好きなのですが、「夏の葬列」は特に「人間らしさ」をあえて挙げたいと思うくらいには好きです。

この物語は最初三人称視点で描かれるのですが、幼少期の回想をしているとき、喜ぶとき、その他感情が大きく振れているときは一人称視点の描かれ方になります。
三人称視点は過去の罪との直面を避けて、どこか他人事のように描写されてるのかなと考えたり、一人称視点の時はなんか力が入ってるのかなと考えたり、そういう風に想像するのも楽しいですね。

山川方夫さんの作品はどれもとても面白いので是非読んでみてほしいです。