Monthly Archives: 12月 2013

ハナキンのお酒の匂い

ハナキンのお酒の匂い

金曜日の夜の駅前は妙に浮かれていて楽しい。いわゆる「ハナキン」の駅前通りを歩けば、そこかしこからお酒の匂いが漂う。お酒なんて全然飲めないくせに、フラフラと誘い込まれて、例のセリフを言いたくなる。「とりあえず生‼」…(笑)今のところビールの美味しさすら解明できていないから、「とりあえず」とゆう感覚はとりあえずまったくわからない(汗)。
それでも居酒屋から聞こえてくる「カンパイ‼」の声と、駅前をフラフラ歩く赤ら顔の人たちの笑顔を見ていると、ついついこちらまでハッピーな気持ちになる。暗いニュースや悲しいことも世の中にはあるけど、できればみんな笑っていたい。酔っぱらいのヘラヘラも、日々の頑張りの中にある。みなさん毎日お疲れさま。
そんなお酒の香りとヘラヘラを横目に、近所のコンビニで、本と小さな缶ビールを購入。飲めない自分が初めて買った缶ビール。なぜか照れて、やけに嬉しくて、そんな自分が少し可愛くて、気付けば歩くペースが早くなっていた。
部屋に着いてうがいをして、グラスにビールを移すと、それはもうびっくりするほど少ない量。私が好きなジンジャーエールならこんなの一口だよって思ったけど、しっかり半分くらいしか飲めなかった。
やっぱり私は、自分が飲むより、飲まれる人を見てるのが好きみたい(笑)。

ビールを飲もう

ビールを飲もう

「今夜はビールを飲もう。」
お酒の弱い君が突然そんなことを言うのは、だいたい決まって金曜日の夜。いつになく思い切った口ぶりがおかしくて、なんだかつい笑ってしまう。毎日忙しい職場で文句も言わずに働いているから、たまには「わ〜っ‼」ってなるのでしょう。いつもほんとにお疲れさま。
私も日頃飲まないから、2人で1缶で充分なのはこれまでの研究で立証済みなのに、必ず君は2缶買ってきて、1人1缶をプシュッと開けて、満面の笑顔で乾杯をする。
これだから思わずつられて、金曜日の夜は楽しい。めったに飲まないアルコールのために、枝豆やら煮込みやら唐揚げやら、めったにつくらないおつまみをこしらえて、めったにしゃべらない君がよくしゃべるのを、夜がふけるまで聞いている。
気が付くと君は、電池が切れたようにそのままソファで眠りに落ちている。缶ビールは予想通り、2人合わせて1缶ちょっとの量が残ったまま。だから決まって、ビールの翌日の夕飯は豚肉を煮たやつになる。豚肉はビールで煮るとやらかくなる。そうすると君は「無駄にしなくて偉い。」と褒めてくれるから、ビール2缶もわるくない。
眠った君にブランケットをかけて、付けっ放しのスポーツニュースを消すと、ホロ酔いの私は読書をはじめる。
君との宴のあとの読書。この時間が一番好き。

幸せなこと

幸せなこと

大切なキミが、今日も元気でいてくれることが、こんなにこんなに幸せな。今こうして、隣で黙って本を読むキミの横顔を眺めている。ただそれだけで心が満たされて、あなたと本の隙間にもぐり込みたくなる。ずいぶんと真剣な眼差しで読んでいるから、きっと「いいトコロ」なんだろう。だから私も、あまり興味のないテレビ番組を夢中で見ているフリをして、ちょっかいを出さないでいてあげるの。たくさんの奇跡とたくさんの偶然で私は結ばれた。近くにいることだけを求めたときは、遠くにいる時間を憎んだ。求めすぎて近付きすぎたら、大切なモノが見えなくなって、今度は離れた。それからお互い、少しの時間を置いてから、結局寄り添った。
愛情って、気付かぬうちに自然と湧き出て、音もなく静かに大きな池を湛える。そんな、泉のようなものかもしれないと思う。振り絞るものでも、どこかから運んでくるものでもなく、いつしか湧き出て、私たちを満たしている。
キミは本を読むのを途中でやめると、ソファから立ち上がり、冷蔵庫から炭酸水を取り出して、グラスに注ぎ、1つを私に渡しながら言った。
「テレビ、今日はおもしろいのやってないね。」
なんだ、気付いてたの?テレビのことも、私があなたにもぐり込みたかったことも。
泉のような幸せで満たされている。これからもずっと続く気がして、私はもぐり込んだ。