幸せなこと

幸せなこと

大切なキミが、今日も元気でいてくれることが、こんなにこんなに幸せな。今こうして、隣で黙って本を読むキミの横顔を眺めている。ただそれだけで心が満たされて、あなたと本の隙間にもぐり込みたくなる。ずいぶんと真剣な眼差しで読んでいるから、きっと「いいトコロ」なんだろう。だから私も、あまり興味のないテレビ番組を夢中で見ているフリをして、ちょっかいを出さないでいてあげるの。たくさんの奇跡とたくさんの偶然で私は結ばれた。近くにいることだけを求めたときは、遠くにいる時間を憎んだ。求めすぎて近付きすぎたら、大切なモノが見えなくなって、今度は離れた。それからお互い、少しの時間を置いてから、結局寄り添った。
愛情って、気付かぬうちに自然と湧き出て、音もなく静かに大きな池を湛える。そんな、泉のようなものかもしれないと思う。振り絞るものでも、どこかから運んでくるものでもなく、いつしか湧き出て、私たちを満たしている。
キミは本を読むのを途中でやめると、ソファから立ち上がり、冷蔵庫から炭酸水を取り出して、グラスに注ぎ、1つを私に渡しながら言った。
「テレビ、今日はおもしろいのやってないね。」
なんだ、気付いてたの?テレビのことも、私があなたにもぐり込みたかったことも。
泉のような幸せで満たされている。これからもずっと続く気がして、私はもぐり込んだ。

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