失いたくない日本の音

失いたくない日本の音

「さらさら」という言葉を聞いて、次に続くものはなんでしょう。私は「舞う」「流れる」を想像しました。風にのって砂が舞う様子、ゆったりとした小川を、水が流れる様子です。「さらさらの」とすれば、後ろの来るのが「髪」や「布」でも使えますね。
どれも全く違うものなのに、ひとつの単語からこんなにたくさんのものを思い浮かべることができるなんて、日本語は不思議なものです。外国の方からみると、どうやら我が国の言葉は難しいらしいですね。母国語として日常使いしている私には難易度がいまいちわかりませんが、これも文化の違いということなのでしょう。私たちが苦労して英語を学ぶのと一緒です。
私が日本文化の中でとりわけ美しいと思うのは、音を愛することです。音楽ではなく音。夏の風鈴に、秋の虫の声。風が葉を揺らし、波がさざめく。自然が生み出す美しい調べ。歌を歌えなくても楽器を演奏できなくても、耳にすることができるものばかりです。
昔はこれを、文化などと考えませんでした。でも外国の方に、それはただの雑音だよと言われて、日本独自のものだと知ったのです。夜遅くまで多くの店が営業し、日々喧騒の中で生活をしているとしても、けして失いたくはないものだと思います。

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