レシピにまつわる母の思い出

レシピにまつわる母の思い出

母が、祖母から譲り受けたというレシピ本のページを繰っていました。もうすっかり古びたそれは、結婚が決まった時に祖母が買い与えてくれたものだそうです。目次には、定番料理が並んでいて、いかにも初心者向けといった内容なのも、納得できます。料理上手の母の起源はここにあるのか、と私は感心しました。
もちろん今、彼女がこの本を見ながら、台所に立つことはありません。家族が好むレシピは、自分なりのアレンジを加えたうえで、すでに頭の中に入っているからです。ちなみに祖母は、働き詰めで、家事は苦手だったのだとか。だから妻となり、いずれは母となる娘に、この本を送ったのですね。
ページをめくりながら、母はそのメニューにまつわる思い出も、次々に話してくれました。これはいつも失敗していたとか、生魚は、目が怖くて触れなかったとか。これは幼い私が好きだったとか。結局、今はこの本に付随する記憶が、何より大事なのでしょう。
いつかもっと年を取ったら、こんなことも忘れちゃうのかしら、とつぶやくので、それがないよ、と返しました。もう何度も聞かされている私が、内容をしっかり覚えているからです。料理はまだかなわないけれど、記憶力なら任せてというと、あなたは私より若いからね、と笑われました。

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